あめふりあじさい、傘をさしたら、葉っぱの雨傘、――きみとならんで。
火のマイアがくすくす笑いながら渡してくれた大きな葉はすっかり傘になって、ぱたたん、ぱん、木々の枝から滴るしずくを受け止めている。
フィンロドはじっと視線を据えたまま動かず、だからトゥアゴンもじっと見つめたまま動かない。
なんだかきらきらした殻のかたつむりがゆっくりと地を這ってゆく。
かたつむりを見つめるフィンロドの目がとてもきらきらしていて、雨にけむる金の髪がふわふわしていて、……フィンロドの奥、葉傘の端から大きなしずくがぽたり、落ちる。
こんな穏やかな雨の日は何もかもが円く感じる。
雨のしずくも、けむる匂いも、柔らかなひかりも、ふたりを包む空気も。
トゥアゴンはフィンロドを見つめている。
(いつまでだってこうしていてもいい)
けれどそのうち、フィンロドはとなりの従兄弟に笑いかけ、トゥアゴンも笑い返す。
葉傘のしずくがぴんと跳ねて、その先に、晴天。
降ればどしゃぶり? 良いことだって、重ねかさねて、――きみのとなり。