珍しいという言葉だけでは括れぬ珍しいことだった。
 海の民の王が白き都を訪れたのは初めてのことで、それは彼に手を引かれている私の末の息子のせい…というか、おかげと言うべきか…、とにかく、珍しいことには違いなかった。
 またいらしてください、ときらきらした笑顔で下から見上げてくるのに、彼は困ったように微笑むと、またこちらにおいでになると良い、と末息子の金髪を優しく撫でた。
 歓声をあげると、末息子は彼に飛びついて、頬に音高く口づけた。
 昔から穏やかな彼が、印象よりも頑固なことは知っている。私は踏み込まない。彼も踏み込ませない。
 そうやってきた関係は、どうやらこの末息子が壊してくれるらしい。彼の驚いた眼に向かって、私は軽く肩をすくめて笑ってみせた。