あいつの気配というか、なんというか、存在感とも曰く言い難い何か。
 雰囲気、も近いような気がするが、それよりも…
「なんですか?」
「ひ」
 存在そのもの、が。読めない。
「ひ、って酷いです」
「そなたがいきなり背中に貼りついていれば誰だってそうなるわ!」
 ええ、と心外そうな声を上げた。密やかに笑う吐息が耳を、くすぐる。
「本当に、気づいていなかったんですか?」
 背筋を震えが走り抜けるのを感じた、と共に――耳元で、ちゅ、と小さな音がした。