伴侶への口づけ。それは当然唇へであるべきで、誰もそれを違えた者はいなかったのだけれど。
そもそもお伺いを立てるのか立てないのか、はたまたそうして会話をするのか、言葉さえいらないのか。
私が、いいなあ、と思ったのは、時の果ての館の片隅で。
広いけれどしとやかな心の在り様のままに、軽やかで鮮やかな愛しいひとに、告げていた。
「キス、してもいいか」
太古の森の芽吹きのようなとろりとした緑の瞳が、言葉に煌めく。彼が笑んで、答える。
「キス、したい」
そうしたら、もう言葉がいらなくなるのも当たり前のこと。