Welcome to …

 ある朝、マンドスの案内人は広間に立つ。

 灰色の扉を入ると灰色の闇が広がっている。否、それは灰色の光かもしれない。

 音楽が聞こえる。
 マンドスの館すべてに音楽は流れているが、ここに暮らす魂たちはほとんど気づいていない。
 音楽はここ、霊の集う世界をつくりあげているから、もう根づいている。暮らすものに染みついている。

 だが音楽は、この扉の間でこそ最も純粋に聞こえる。

 それは、魂を愛撫する音楽だ。
 時に耳を聾する甲高い響きを伴い、それでいて滔々と深い。
 静寂そのものが音楽となれば、こうもあろう。

 その音楽は鏡のように在る。魂を映す鏡、この館にふさわしく。

 音楽を聴きながら案内人は瞳を閉じて、灰色の扉の前に立っている。
 彼の両隣には黒い扉と白い扉がある。

 案内人は立っている。瞳を閉じて。その表情は彫像のように静かだ。

 音楽は流れ続けている。案内人は瞳を開ける。

 目の前の人影を認め、彼は微笑む。
 そして告げる。

 「おかえりなさい。ようこそ、マンドスへ!」