仕方のないひと、とアナイレはフィンゴルフィンの胸の上で呟く。
身支度を整え終わって部屋に戻ってみたら、先ほど起こしたはずの夫はまだ眠っていた。
かなりしっかりした声で、相当長い会話をしたはずなのだが、してみると、あれは寝惚けていただけなのか。寝言を正しく寝て言っていたと。
それで、今はアナイレを身体の上に抱え込んで、やはり彼は安らかに夢の中だ。
(あたくしは掛布じゃないのだけれど)
頬を寄せる。睫毛と睫毛がふるふると触れあう。
「……そこも好きよ」
ぴったりと寄り添ってふたりで眠った。休日だ。