【マハタン】
「暑い――ねぇ」
「……そりゃ、鍛冶場ですから」
「いや、ここに限らずさ」
「そうですか…?」
「だからタニクウェティルまで行かない?」
「――その“だから”は一体どこにかかるんですかお知恵さん」
「暑いから」
「……雪遊びでもしに行くんですか?それとも長上王の元で風に泳ぐか」
「うん――、暑い、から。君が火にばっか感けているのが余計に暑苦しい」
「いきなり責めないで下さい」
「だから行こうよ」
「……。おひとりで、どうぞ」
「つれないなぁ、マハタン」
「俺には今は火の方が魅力的なんですよ」
「むぅ…。仕方ないか。じゃあひとりで行こう。――行って、雪の上を転げまわってへとへとになって、涼しい通り越して冷たくなってきて、埋もれて動けなくて、にっちもさっちもいかなくなって…」
「お知恵さん…。なんでいきなり不吉な未来予想なんかするんです」
「困り果ててどうしようもなくなったら――」
「“愚かさん”に改名でもしますか?」
「君は、なんとなく現れて私を助けてくれるんだ、って思ってる」
「……………」
「だからいいや、ひとりで行こう」
「……待ちなさい」
「何、マハタン?」
「雪の方が魅力的に思えてきました。一緒に行きます――フィンウェ」
「うん、ありがとう」
キーワード【雪】
「そうだね、例えば私が雪に埋まってにっちもさっちもいかなくなって困り果てた時に、君はなんとなく現れて、私を助けてくれるだろうな、とは思っているよ」