いろいろ考えるわ、とアリエンは言った。そうね。楽ね。太陽の船はラウレリンと同じ性質だもの。真面目なのよ。
月の島はテルペリオンと同じ。あのひとと相性は良いはず。ヴェールの向こうでアリエンは微笑む。
そうよ、いろいろ考えるわ。ラウレリンが好きなのかしら?テルペリオンを?太陽が月を好きなのかしら?追いかけられるのが好きなのかしら?いろいろ――考えるわ。
ティリオンの足取りが定まらないために、月は毎夜出たり出なかったり、出たとしてもろくろく輝かなかったり、きわめて信用ならない光だった。太陽を追いかけて近づいては島を煤けさせ、歌っては島をざわめかせ、アルダの底でもふらふらと戯れて、アマンにはちっとも寄り付こうとしない。
そんなティリオンに対して、太陽の船を導くアリエンはといえば、判で捺したように定められた航路を定まった時で通った。
空を征く時に何を考えるか――いろいろ考えるわ、とアリエンは言った。
二つの木のことを思い出すわ、時には。そうも言った。
ラウレリンは花の数も咲く時間もほとんど同じ。「真面目に」咲くの。
テルペリオンは「楽しく」咲いているの。たくさん花を摘んだわ。あなたにも渡したわね。
昔、ローリエンで夢心地のマイアに、山と摘んだ銀の花を浴びせたことがある。
ティリオンは花に埋もれて、無言のまま、怒りたいのか喜びたいのかよくわからない表情をした。
思った相手でなかったのに驚いたようでもあった。
「ねえ、でも私、月が出ない夜の、アルダの裏側がとても好きよ」
それは今夜だ、僕は知っていた。
アリエンはヴェールを取って、――笑った。
それから身を翻すと、軽やかに駆けていった。