「やっと出てきたな、マエズロス。久しぶりだ」
「ニルヴァーナ。…そうか、あなたは最後の船で来たのだったな」
「うん。さっそくなんだが、吾の息子の父親を見かけていないか。言いたいことがある」
「あー、我が勇敢なる従弟どのがこんなに出てくるのが遅くなったのは私のせいだから、そこを責めるのだったら私も同罪なんだが…」
(だだだだだだだだだだ)
「いや、怒る気は、その、ちょっとはあるが、……一応いいことしてやろうかと」
「いいこと?」
「いろいろ許可を出してやろうかと思ったんだが、」
「師匠殿ー♪」(ぎゅむ)
「放せ変態。やっぱりやめた」
「あーこの感覚この香り。何年ぶりだろう」(ぎゅむぎゅむぎゅむ)
「……ああ、すまないニルヴァーナ。“それ”はマンドスで完全におかしくなった」
「そのようだな。ぎゃあ胸を揉むな馬鹿(がすっ)」
「え、だって胸は師匠のトクベツだろ?」
「………。マエズロス。吾は結婚なんぞしてないからこいつとは無関係だよな?そうだと言ってくれ」
「……あなたもきっぱり容赦しないな。――フィンゴン。夫婦が破局するのは見たくない。離れろ」
「……(しぶしぶ)」
「お前には頭が下がる。長年こいつをあしらってきたかと思うと」
「半分は慣れだ」
「慣れか…」
「………慣れだったのか…(ずーん)」
「……………(ちら)」
「…………(いやここで情けをかけたら負けだ、の目配せ)」
「…………(そういうものなのか、の目配せ)」
「…………(大丈夫、すぐに復活するから、の目配せ)」
「………その、なんだ、マエズロス、お前が出てきたということは、マンドスにはもういくらも残ってないだろう?」
「そうだな。起きている方はもう本当に何人かしかいない」
「ということは…。世界の終わりまでにはまだまだ期待できるということだな(嬉)」
「?何をだ?」
「吾の待ち人はお前と、一応これと、あともうひとりいるんだ」
「酷い!師匠、それ浮気っ!」
「う、浮気…?」
「………待ち人と言っただけで浮気と取るとは随分おめでたい脳だな…。こらエレイニオンの父。そんなこと言うなら吾もちゃんと宣言してやる。浮気なものか。本気だ」
「!(がーんっ)」
「………(はんっ)」
「(こそこそ)……ニルヴァーナ、差し支えなかったら誰を待ってるのか尋ねてもかまわないか…?」
「ん?フィンウェだ」
「……?……おじいさま?――ああ、そうか。クウィヴィエーネンで関わりが」
「関わりというか、身内だ。甥っ子」
「……………へ」
「言ってなかったか?兄の息子だ、フィンウェは。……だから本当はこいつとの結婚は真面目にギリギリなんだが…」
「………確かに、それは…ギリギリだな…」
「あらゆる意味でギリギリだろ。悩んだぞ」
「その、…良かったのか…?」
「悔いるようだったらあんなに苦労して遺体なんぞ拾ったりしない。良いんだ」
「そうか(にっこり)」
「そうだ(にっこり)」
「……何ふたりで楽しそうに微笑みあったりしてるんだよ…。おれだけ仲間はずれにして」
「良かったなフィンゴン。お前は愛されてるぞ」
「そうそう、愛するがゆえの仕打ちだ。諦めてくれ」