蓮沼ナルゴスロンドの話

 蓮沼ナルゴスロンド。と呼んでいるところのフィンロドとオロドレスがいるナルゴスロンドにケレゴルムとクルフィンがいた時期の話。あとケレブリンボールとフィンドゥイラスとグウィンドールもいるんだけど、まあこどもたちはちょっと置いとくにして。
 蓮沼ナルゴスロンドくくりで書いた短編が6つある。
 
リリカルモンスター 潮騒と松籟
 発端の話。まだHoMeのどこか探せてませんけど、オロドレスとケレゴルムにはfriend記述があるんですね。ともだち?マジかよ。というわけで本腰入れてともだちになれるかどうかを考えたらともだち、じゃん。とかいう結論が出た。ので形にした。という話。
 オロドレスが語った話→を書いたフィンロドの手記→を読んだ後世からの考察。
 オロドレスはアマン時代から山好き、というか隠れ家持ち。後々わんどろでも書いたけど、「ひとりでいる」「山(自然)に溶け込む」ってやつ。海にも行くけど、似合うけど、泳いでないかもしれない。そんなイメージから浜辺で過ごす。
 ケレゴルムは森を駆け回っている。森からの山も勿論知ってはいるけど、海には縁がない。似合わない。
 そして、松籟を示すオノマトペに「ざざんざ」っていうのがある。これ、私は波の音でもいいと思った。というのからうまいこと融合して出来たのがこの話。
 ケレゴルムの打ち明けた秘密っていうのはそれこそ墓場まで持って行く(実際「言葉にしていない」という意味で持って行った)ようなものなんだけど、そういう墓場まで持って行く系秘密を打ち明けられてそれを墓場でも口を割らないタイプ(言い訳としては「忘れた」)がオロドレス、というのが決まったのもこの話書いた時だったな、確か。
 懺悔相手みたいなものだったけど、一度きり言って、二度と言わなくて、聞いた方も墓場の先まで持って行く。
 ケレゴルムとオロドレスの間にあるのは信頼関係だけど、甘え甘やかしでもあるし、違うものなのをしっかり分かっていての寄り添うことはできるような繋がり、とかそういうやつ。愛って呼んでもいい?
 傍から見たらすごく不思議。なので話を聞いたフィンロドもすごく不思議がってる。でもフィンロドが不思議に思ってるのは本当は別のところ。その話はあとで。

デイドリームサウンド 幻を聴く
 ケレゴルムとオロドレスにとって「潮騒と松籟」はあの浜辺でのちょっと変わった穏やかな時間の思い出。
 秘密でもある。潮騒に松籟を聴くのも、松籟から潮騒を聴くのも、思い出と繋がっているからもちろん幻になる。イメージの問題。浜辺の思い出を共有しないとわからない。
 そして秘密の共有をかなり楽しんでるふたり。おかげで傍からみると不思議極まりない。
 松の浜辺と潮騒の風景は、見た目にはかなり荒涼たるもので、色も彩も薄い。そんな荒涼たる風景をたいせつにする心持が、なんとなく周囲をざわつかせているような感じ。

ハイドビースト 言い知れぬ不安
 フィンロドの不思議が不安に変わった時。
 潜む獣っていうのがここらへんのテーマ。
 ケレゴルムはアマンの頃から自分の中に獣がいるのを自覚している。けっこう思考も獣寄りで、同時に狩人であるからなんとかなっている。
 オロドレスはケレゴルムが獣であることを感づいている。感づいていて、それでそのまま受け入れている。
 実は浜辺の始めから、オロドレスはよくフアンにのしかかられて大胆な愛情表現をされている。ケレゴルムはなかなか止めない。見て笑ってる。それを初めて見たフィンロドは、何かよく分からない不安に駆られる。つまりは闇に潜む獣に気づく。気づいたけど確信ではないし、その潜む獣も含めてオロドレスが受け入れてるようだから、どうにもならなくてぞっとする。悪い予感だけがする。
 でもケレゴルムとオロドレスは最初からそういう立ち位置だから、今更なにもおそろしいことはない。誰が不安になっても、ふたりの間ではこれが正常。

スクラップバニー 鬱病かもしれない
 ところで放っておかれて、というわけでは本当はないけど、完全に鬱病みたいな有様になってるひとがいる。クルフィンだったりする。
 クルフィンは実のところ物凄く真っ当かつ繊細だったりする。そして同時に芸術家で職人であるがゆえに戦で気が狂いそう。感受性の強さでケレゴルムの獣を感じ取ってる。でもそれがケレゴルムから来てる感情だって気づいてない。ケレゴルムは、クルフィンのかなりの部分が自分のせい(影響を与えたという点で)と思っている。ので決して見捨てない。見捨てることはできない。自分を映す鏡を捨て置けない。こんがらがった相互依存になりかけてる状態でナルゴスロンドに来た。そしてクルフィンはケレゴルムの知らない一面を見た。
 感情面において、クルフィンにとってオロドレスが敵になった。ケレゴルムが愛しているから。
 兎に対してアレなのはそのままオロドレスに対してのアレな感情。だけどどうにもからまわり。
 実際に私が鹿狩りに行ったので、狩りの獲物と解体についてかなり真面目に考えた。私は獣の解体とか全く気持ち悪いとか思わない性質だったらしい。オロドレスがそういうのダメそうな印象(かなりおとなしい)であるにも関わらず実際のところそういうふうにはたおやかではないというところ書きたいなーと思っていた。

メタモルフォーゼオブザーバー 空を見て海を愛す
 大体いつも悩み多きひとになってしまう。ごめんフィンロド。きっと見えるものが多すぎて、心配りするものが多すぎて、色々関わってしまうがゆえに大変なんだろうな。
 ケレゴルムとフィンロドは相容れない。対等に主君同士でかつ相容れない。
 ケレゴルムはフィンロドの抱えている悩みの正体に気づいているけど、フィンロドはケレゴルムの悩みの正体は分からない。悩めるふたりの対話なので含んでるものがものすごく多い。でも読み返してみたら全体的に直球で書いていたことに驚いた。だいたい素直に言う。
 というわけでそのまんまです。あちこちに広げたい枝を出しまくっていますが、フィンロドの尋ねるところのケレゴルムとオロドレスの関係、ケレゴルムの見解は最後の一行に尽きる。
 ケレゴルムとオロドレスの関係については私の中ですごく明確に決まってくれた。
 ここまでいったら確かにともだちだな、って思う。いわゆる思い描くともだちからは奇妙に外れてるけど。

ナイトウォーカー ひみつの夜歩き
 フィンロドがオロドレスとケレゴルムの仲について何かを危ぶんでいるように、オロドレスはフィンロドとクルフィンの仲について何かを危ぶんでいる。
 実際のところ何もない。ただ話してるだけと言うけど、気持ちの傾け方の点で危ぶまれている。ある意味リリカルモンスターの裏返しの話なんだけど、どうしてだかクルフィンが絡むと話の組み立て方が投げ出したみたいな形になる。どうしてだクルフィン。


 
 蓮沼ナルゴスロンドは目次ページにも書いてる通り「誰と誰の間を取っても「※恋愛ではない」」という話。
 恋の相手への思いが見え隠れしつつ、今現在のこの相手との関係はこう、みたいなところを書きたい。なぜ泥沼感がただようのか。そりゃあ生きるって恋愛だけじゃないからね。そうだよね。
 恋に限らずわかってもらいたい気持ちとか、わからなくても受け入れてもらいたい気持ちとか、そういうのごちゃごちゃやらかしてたのがあの時期のナルゴスロンドな気がしてるんですね。こどもたちを加えるとさらに混沌とする。泥沼なのでそこから蓮の花が咲く。蓮の花だなって思うくらい、振り返ると少なくとも思いが純粋なので「綺麗」だった。
 総合すると綺麗な話です。あと、ちょっとつめたい。