真水の浅瀬でぺたりと座りこんで。
「オルウェ殿」
貝でも何でもない石をためつすがめつ光にかざし。
「ああ、なんか」
それでも手を差し伸べたら素直に掴んで立ち上がる。
「なんか…。なんだろう。とっても不思議な気持ちになるのだけど」
とろけたような眸で彼は言った。オルウェは笑った。
「わたしたちは海を母とします。母なるアルダの、母の部分は海だと」
砂浜を歩きながらそうオルウェが告げると、フィンウェは波と乾いた砂の際を通りながら呟いた。
「そうか。ノルドールは、大地かもしれない」
オルウェはふっと顔を上げた。声の響きに何か違うものを感じたからだった。
「あなたは違うのですか、フィンウェ殿」
「私は…」
潮風が編まれていない黒髪を翻した。
「……そういえば、さっき気づいたけど、私は泳いだことがなかった」
「ない?」
オルウェは驚いた。
「湖では…?」
「うん、それが、私は湖の時はこっちが、ね」
フィンウェはひらひらと左手を振った。
「教えてくれる?」
「泳ぎですか」
「うん。休暇だからねー」
オルウェは笑って、その前に食事と着替えですね、と言った。