「イングウェの髪編んだの、フィンウェでしょ?」
席を外したイングウェを待っていると、唐突にマンウェが現れて言った。
「え、ええ、そうですけど……っ!?」
マンウェが来ること自体に疑問はないが、ぴとっとくっつかれてスリスリされては、さすがにフィンウェも驚いた。もともとフィンウェは抱きしめられることに慣れていない。抱きしめるのはよくやるのだが。
「こんなに器用なのに指冷たいんだー。うーん、不思議」
はみっと指を咥えられて、内心きゃあ!と叫んだところに冷静な声が降ってきた。
「……指先まで熱い時だってあります」
言葉の内容にフィンウェはひそかに赤くなった。マンウェが指を掴んだまま、にこっと笑った。
「やー、イングウェ」
「何ヒトのお客を口説いてるんですかマンウェさま。来るの禁止って言ったでしょう」
「違うよ、東屋でのお茶会は禁止でしょ?館なら良いじゃん」
「ほー、そういうことを言って、以前に東屋でマエズロスを固まらせたのはどなたでしたかね」
「…わたし?」
「来るなら来るって言ってください」
イングウェは溜息をつくと向かいの椅子に腰掛けた。
「イ、イングウェ…?」
助けてくれないの!?と目で訴えたフィンウェを見て、彼の背後でギュっと抱きついているマンウェを見て、イングウェは肩をすくめた。
「休暇だから、我慢してくれ。ほどほどにしてくださいマンウェさま」
「なんかそれ矛盾してるような…」
「マンウェさまと話す時に考えたら負ける」
ぼそりと言われたことを聞いているのかいないのか、マンウェはご機嫌に笑った。