エルウェ

「わたしは相変わらずそなたに恋しているからな」
 マンドスで再会したエルウェは、ぬけぬけとそんなことをフィンウェに言った。
 フィンウェは灰色の瞳を丸くした後、自覚あったんだ、と呟いた。

「自覚?」
「恋なんだ?」
 今度はエルウェがきょとんとしたが、フィンウェは笑って続けた。
「それじゃ――あなた、奥方の事はどう言い訳する気だい」
「言い訳?する必要などないぞ」
「ふぅん?」
 フィンウェは面白そうにエルウェを見る。
「メリアンと会った時に、どうにもこう思えて仕方がなかったのだ」
 エルウェは両手を広げた。

「ああ。――これが、わたしの運命なのであろうな」

「………へぇ」
 エルウェはふくれた。
「そなた、信じておらぬな」
「いや、信じちゃいるけどね。
 エルウェにとっては恋と運命は違うものなのだなぁ、と」
「そなたには同じものか?」
「ぅん――」
 ゆっくりと微笑んでフィンウェは答えた。

「そう、恋が成就している時は」
「……ふむ」
 感心したようにエルウェは呟き、フィンウェにすり寄る。
「ではそなたの運命は、今はここにあるということだな」
「まぁ、そうかな」
 フィンウェはエルウェの髪を撫ぜる。
「相変わらず――か」
 静かな言葉にエルウェはいたずらっぽく笑った。
「そなたに会うと戻るのだ」
 睦言に、フィンウェはまた、ふぅん――、と笑った。
「私はどうだろう?」
「どう変わろうと…」
 残りは耳元で紡がれた。
 …わたしはそなたに恋しているだろうな…