「ぅえああああええあああ」
ころころころり、奇声を上げて転がり転がるエレンミーレを、ルーミルは珍しいなあ、と眺めていた。
「ううううぅうえええ」
ほんとにめずらしい、と考える。行動は珍しいけれど、原因の方はそんなに珍しくもない。
エレンミーレが感情のままに悩むのは、昔っから、弟子に関することだけだ。
ちらり、転がるエレンミーレの周囲を見て、大体のことは予想がつく。
あれはお気に入りのやつ。これは絶対見せるって言ってたやつ。それからあれは…
帯、波頭のきらめくような白色の端正な波模様と、やわらかな水色に音が流れる、それをガッと音が出そうな勢いでエレンミーレの手が掴み、同時に彼は物凄い勢いで起き上がった。
「ねえどう思いますルーミル!私、気合入りすぎてるやつじゃないですか!?」
「うーん、そうだねちょっと…」
「でもダメなんです見た時にも頭をよぎったっていうか、私合わせて見ても、別に似合わないわけではなかったけども、でもこの前のあの子のアレ、アレに絶対合うっていうか」
「ちょっとまあ…でも、マグロールさまなら喜んで受け取ってくれると思うよ」
「でも重いですよね!?」
「んん軽くはないかもだけど…」
物理的にも。ルーミルは言葉を探す、探す、探して…諦めた。
「大丈夫、建物よりはたぶんまし」
「私史上最大の貰い物レベルなのか!?」
「あごめん違うね。えーと、マグロールさま貢がれ慣れてるから平気だよ」
「私も貢がれ慣れててもそこそこびっくりしましたけど!」
「受け取ってくれるよ~」
「受け取ってくれない心配なんかしてませんよ私がはりきってておかしくないかって言ってんですよ!」
よ…、よ…、よ…、と残響の中で、ルーミルはゆるい笑顔で言った。
「おかしくはないよ」
「じゃあなんです」
「これくらい悩んでたよって教えて差し上げたいくらい可愛い」
「私いつも可愛いですけど」
「うん、可愛い師匠からの贈り物はちゃんと嬉しく受け取ってくれる」
ふむ…。エレンミーレはちょこっと唇を尖らせた。
「喜んでくれますかねえ…」
ふふ…、ルーミルはますますにっこりした。
そういう気持ちの君だから。
「うまくいくよ」