後に「薄明を愛する者」と言われるエイセルロス、ノルドールの言葉で言うならば琥珀のエフテルロトは、ヴァンヤールの王にして全エルダールの上級王イングウェの伝令使であった。かれの足は強く、軽く、速かった。
クウィヴィエーネンのほとりから、かれはたびたび暗闇の遠くへさまよい出たが、影にも黒の乗り手にも捕まることなく戻って来た。古い歌に語られるそれら影の姿の詳細は、実にかれの言によるものが多いのである。
かれの髪は他の誰とも似ていなかった。それは最も強く輝く星の光を浴びた森の樹肌の金であり、月と太陽の出現より後は、真昼と夕のあわいの空、朝の先触れ、薄明の金と称された。
かれはほんの幼い頃に、暗闇から逃れ出てきたところでイングウェと出会った。かれの親族はイングウェにとっても親族であろうと思われた――そしてその親族が失われたであろうことも同時にわかった。
イングウェはかれの身の軽やかさと姿の美しさをことのほか愛し、近くに置いてさまざまなことを教えた。エイセルロスはヴァンヤらしく落ち着きのある心の持ち主であったが、身の方は心にそぐわぬほど軽く、速く、どこまでも駆けていくのだった。ゆえにイングウェは、かれを自らの伝令使とし、方々へ行くことを許し、またその理由を作ってやった。エイセルロスの、心というより魂そのものが、留まらぬことを求めていると知っていたからである。
オロメの到来により、ヴァラールの召し出しがイングウェから告げられると、エイセルロスの心はすぐさま二つの木の光とアマンの地への憧れで満たされた。
かれは中つ国を愛していたが、同時にまだ見ぬもの、これから見るであろうものをも同時に愛していた。旅はかれの魂に合うものであり、旅の終わりに待つものも、かれを強く惹きつけた。
だが、たとえ旅の行き先がアマンではなく、暗闇の果てであったとしても、イングウェが言うのならばかれは従ったであろう。
イングウェはエイセルロスの主君であり、父であり、忠誠を誓った者であり、また何よりも愛し崇める者だったからである。かれの愛も忠誠も生涯変わることはなかったのだが、そのことは後にかれの苦悩の種子となった。