この遣いの仕事を通して、エイセルロスとフィリエルは出会うこととなった。フィリエルはクウィヴィエーネンのほとりで遠くを駆けるエイセルロスを見たことがあり、エイセルロスの耳には時折、世界を称えるフィリエルの歌が聞こえることがあった。
ふたりの心に愛が充たされるまで、それほど時間はかからなかった。
返書を待つ間、ふたりは共に逍遥し、ゆっくりと多くを話した。
そしてお互いに、魂の求めるもののあまりの類似に驚嘆した。ふたりがこれまで世界に向けていた愛は、同じ熱を持ってお互いに向いた。かれらは同じものだった。ふたりではなく、ひとりだった。全きひとつのものだった。
それこそが今まで求めていたものだと、気づいたのである。
ふたりは星々の下、静かに寄り添って立っていた。互いは互いを見てはいなかったが、互いが同じひとつのものを見ているとわかっていた。
互いの目は互いの目であって、自分のものではなかった。
かれはかの女でありかの女はかれであった。
かれの目でかの女は見、かの女の耳でかれは聞いた。
やがて、フィンウェがそれを呼ばわった。それはふたつに分かれ、エイセルロスとフィリエルになった。かれらは互いを見て、自分を知った。そして分かたれてしまったことを悲しく思った。
以来、エイセルロスとフィリエルは、遣いにおいて逢瀬を重ねた。
かれらは未だ成年には達しておらず、さらには別氏族の者であった。かれらの愛は、当時の慣習としては歓迎されたものではなかった。さらには、かれらの親と言うべき偉大なふたりは、この縁をあまり喜ばぬだろうことが分かっていた。
やがてかれらは話さなくなった。互いが逢う時、もはや言葉は必要でなくなっていたのもあったが、何より言葉は互いに、主君への愛のために使うものだと感じたからである。