口説きバトン 光

【イングウェ】

 「………………いずこも同じ、か」
 「………………何が、さ」
 「私もだが、そなたも、だな」
 「だから、……何がさ」
 「その……何度目でも、来たばかりでは魅せられてしまうと」
 「―――光に?」
 「そう。……フィンウェ」
 「ああ…、ほんとうに、“なんと明るいものだろう”!」
 「……フィンウェ?」
 「“火よりも、星よりも、明るい。あらゆるものを際立てて、鮮やかに見せる”――薄明の地に慣れた目にはあまりに眩しい。皆、そうなのだろうね」
 「そうだろうな。光に焦がれぬ者は、きっと、いないのだろう」
 「それにしても…イングウェ?やはりあなたは美しいね?光にあって、光のようだよ」
 「……………!?」
 「どうしたの、まばゆき光の君」
 「な、いきなり、何、を」
 「何って、前にここに来た時に言いそびれたから、今言っただけ、…だけれど」
 「……気恥ずかしいことを」
 「どうして。事実なのに」
 「面と向かって言われると面映いのだ」
 「そうかなぁ…。ああ、そうだ、ノルドールに提案しよう。いざや我らが友ヴァンヤールの美しさを心おきなく褒め称えようと」
 「なっ…?」
 「この光のもとで、より美しいのはあなたたちだよ。きっとそれも皆思っている」
 「フィンウェ…」
 「事実は素直に認めなくてはね。…それに、誰かのために何かをできるのは嬉しいものだよ。それが親しい友なら、なおさら」
 「それは良いかもしれないが、では私たちはどうやってお返しすれば良いのだ…」
 「お返し?いらないよ。美しいものは美しいまま在ればいいんだから」

  キーワード【光】
 「“なんと明るいものだろう!火よりも、星よりも。あらゆるものを際立てて、鮮やかに見せる”……やはりあなたは美しいね?光にあって、光のようだよ。まばゆき光の君」