ミーリエルの理性は異様なほどに冷たく落ち着いていて、感情の炎をよく制しているといえた――恋を知るまでは。
恋は制御のできない炎であり、炎の糧、核となるべきものは魂に根ざしていた。
魂。
それを思ってミーリエルは恐怖にとらわれた。
それでは恋は、恋を知っては真の安らぎなどは求められないのではないか。
その通り、恋は彼女から安らぎを失わせた。恋が成就してもそれは変わらなかった。
否、それはさらに激しくなったとも言えた。
安らいだことはなかった。そうミーリエルは思う。
安らぎは愛から芽吹くのだという。ミーリエルには、恋を愛に変えることはできなかった。
深く広く、激しさを包み隠してしまえるような愛には。
周囲は彼女こそ、そのような愛の持ち主だと言ったけれど。
千度、恋を拒んで、ミーリエルはついに逃れられないことを知った。そうして、誓った。
「貴方が、わたくしを責めないのであれば」
成し遂げましょう。成し遂げてみせましょう。ただ貴方だけのために。
辛い誓いだと知っていた。滅びも結末も知っていた。けれど、この恋は捨てられないと悟ってしまった。
「成し遂げられるでしょう。――そう、信じましょう」
わたくしは貴方を手に入れることができたのですから。
ミーリエルは誓って、……そして魂の軋む音を聞いた。安らぎを失ったことを知った。おそらくは、永遠に。