寝顔/フェアノール

 たぶん悪い夢を見て目がふと覚めたので、奇妙に鼓動の音が耳について離れず、寝台の上でフェアノールは苦々しげに眉をしかめる。
 髪を乱暴にかきあげると、細めた目の端に暗い赤がにじむ。
 フェアノールは、寝台の上をいざって、ネアダネルに触れる。
 (どうしてこんな端にいる)
 抱き込んでこちらに向かせると、ぽっかりと瞳が開いた。
 ぎくっとしてフェアノールは動きを止めたが、ネアダネルは小さく笑った。静かに瞳が閉じる。

 やがて深い息を聞いて、フェアノールは耳鳴りの去ったのに気づく。
 隣に眠る顔を眺めていたが、じきにフェアノールはネアダネルの胸に顔を埋めた。
 くらくふかくあたたかくおもくやさしく、
「……落ち着く」
 ネアダネルの手がぼんやりとフェアノールの頭を抱く。ぼんやりと揺れている。