寝顔/インディス

 ――す、と一滴、頬をつたったのは紛れなく涙。
 血の気の失せた顔、煙る睫毛、色の落ちた唇。

 “こんなにも世界はうつくしいのに、この方は彩りをなくして”
 そしてインディスの知らない“死”を柔らかくまとっている。

 インディスは椅子に座るフィンウェの膝に頭を凭れかからせる。
「…おひとりで、抱えこんでしまわないで」
 開いた窓から風が揺れて舞いこむ。
 インディスも目を閉じる。

 心は透けていって、迷っていた。
 世界はひたすらに静かな音を湛えている。