寝顔/ミーリエル

「ねえどうしよう、嬉しすぎる」
 まるで貴方がちいさなこどものように私に頭をすり寄せて。
「どんなこと話そう」
 わたくしと貴方とこの身の内のこどもと、3人で寄り添って。
「早く、おいで」
 それでも貴方はふと遠くへ心を飛ばして、裂かれそうになってしまって。
「生まれておいで」
 わたくしを困らせたり、淋しがらせたり。
「世界はとても、うつくしいよ」
 わたくしを嬉しがらせたり、喜ばせたり。

 胎児のように丸まって、フィンウェはミーリエルの膝に頭を預けて――眠っている。
 ごく低い柔らかい声で子守唄を口ずさんでいたミーリエルは、ふと風の匂いに気づいたように首をかしげる。
 針持つ手はそっと、ふたりの家族を愛しむように形をつくり、優しく撫ぜた。

「……おかえりなさい」
 切なさを帯びた囁きは、まるでちりりと痛む幸せのようだった。