現パロ日誌 12月

 12月1日(火) フィンゴン

 あー、怒涛の一ヵ月だった。
 日誌書くヒマなかったと思って、久々にコレ見たら、11月全部マエズロスが書いてんのな…。すげーや。あいつ、いつ書くヒマあったんだ?
 やっぱ11月のビッグニュースっつったらマイグリンが生まれたことだよな。アレゼルが母になるとか、おれ感動で涙ちょちょ切れそう。エレイニオンに従弟が出来たんだなあ…にーちゃんなんだぞって言ってやっても全然わかんない顔してたけど。
 何言ってんだよカランシア、うちの場合イトコなんて兄弟みたいなもんだろ。トゥアゴンとフィンロド見てみろよ。……そりゃおれと君とはああもワンセット育ちじゃないよな、わかってるって。一応仲は良かろ?兄弟みたいに……あーわかったわかった、おれが悪かったよ、七兄弟に割り込む気はアリマセン!はあ?ちょっと待てそれどういう意味だ!おい!

 12月2日(水) トゥアゴン

 うわあああああっ

 し、死ぬかと思った。確かに久しぶりなんだが、家に帰って来た瞬間兄上のジャンピングハグは流石にきつい…アルゴンはにやにや笑ってて助けないし、アレゼルは私にマイグリンを近づけようとしないし…私は立派に一児の父だぞ。人をなんだと思ってるんだ。甥っ子可愛がって何がいけないんだ!

 12月3日(木) イドリル

 おとうさまにはないしょなの。きょう、マイグリンにあったわ!
 おとうさまが、きのうのよる、ぶつぶつすねてたから、おかあさまがきょう、じゃあこっそりあいにいっちゃいましょうっておっしゃったの。それで、おかあさまとふたりで、アレゼルねえさまのところにいったの。マイグリン、ぜんぜんなかないのよ。とってもいいこ!よるみたいなおめめがすっごくきれいないろで、そういったら、アレゼルねえさま、なにかもごもごいってたのよ。どうしたのかしら。

 12月4日(金) アングロド

 わああああー!
 叫び声で始まるって、これ一昨日のトゥアゴン兄の日誌みたいだな。違うよ。ぼく寝坊したんだよ。正確に言えば、二度寝で爆睡っていうの?
 うん、起きたらすっごい時間だったよ。
 もちろん色々間に合わなかったよ。しかも電車が人身事故で止まっててさぁ。ぼくの路線じゃなかったんだけど、流れ込んできて死ぬかと思った。
 授業もやたら延びたし…疲れる一日だったかな。そういう意味では。

 12月5日(土) オロドレス

 今日は忙しかったな。朝から見舞いに行って、その後観劇。途中で具合が悪くなったお婆さんがいた。少しお茶して、最後の夕飯は…。
 ううん。マエズロスが「あいつはお喋りだ」って言ってたのが、今こそ分かったよ。とりあえず、わたしはフィンドゥイラスを引き取って、このひとを…マグロールを預けるので良いのかな。

 12月6日(日) カランシア

 先月の頭から上演してた仕事の公演が千秋楽だった。のでちょっと観に行ってみたんだが。
 ああも気に入られるとは思わなかったな。大好きなんです手放したくないので下さい、と言われるとやはり嬉しいものがある。本当は、靴も揃いでやるはずだったんだ。靴は靴で店の方に回したから結局舞台には間に合わなかった。
 そういえばあの衣裳の布の端切れは妻が楽しげに日避けにしていた。太陽光で見るとまたそれなりに違った味わいで、面白い。外で着るドレスにも良いかもしれない。今度の野外の仕事のは、あの生地を使おうかな…。ずいぶん先の話だ。夏だから。

 12月7日(月) ネアダネル

 私の結婚式で私が被っていたヴェール?
 ああ、その後アナイレもエアルウェンも使ったやつね。あれはお母さま王妃から頂いたのよ。とはいっても、お母さま王妃も使ってないのよ。頂いたのだけれど。
 ええ、義母君のなのだけれどね。だから、義父上は見てるはずよ。そりゃあそうよね。目の前の花嫁が被ってたのだもの。……いつ見ても惚れ惚れするわ。細工の繊細さもそうだし、仕上がりの見事さもそうだし、何よりも式の時の感動を思い出してね。

 12月8日(火) フィンロド

 本、本、本、本、本、本、本、本……見渡す限り、本ばっか。
 さすがトゥアゴン。筋金入りだね。これじゃマエズロスに「死因は本で圧死」って言われるのわかるよ。君たちホント仲良いよね。ある意味で。

 12月9日(水) アムラス

 アムロドがインフルエンザになったかもしれない。熱が高いんだ。ど、どうしよう。
 とりあえずお互いマスクして、アムロドは寝てて、私は起きてるけど、兄上には「お前も可能性が高いから」って外出禁止令食らったし、そもそもアムロドが苦しいってことは、私だってなかなか苦しい。ほら、良く言うだろう双子はいろいろ伝わるって。息苦しい。あ、マスクのせいか。
 ああ。病気なんて。どうしよう、久しぶりだよな。私も寝るのはなんとなくアレだから、窓辺で考え事でもしよう。大丈夫、アンバルッサはすぐに良くなる。良くなる…。

 12月10日(木) アムロド

 あ、はははは。
 案の上、というか、ぼくが治ったらアムラスが倒れた。兄上も「予想通りだな」って、フツーの顔してる。
 ぼくはインフルエンザじゃなかったみたいだけど、アムラスのこれは完全インフルだね。ということは、ぼくもまたぶり返したりするのかなあ。困るな。

 12月12日(土) フィナルフィン

 おやつ。おやつって大事だよね。たとえそれが3時のおやつじゃなくって6時のおやつだとしてもね。
 今日のおやつはアップルパイとホットケーキ。とはいえ、マエズロス着いたの3時だったから、おやつの時間は6時だった。夕飯も勿論ずれ込んで10時半。いやあ、オトナだね、私たち。
 仕事は捗ったのかどうなのか今いち分からない。3歩進んで2歩下がったかな。1歩は進んでるんだ、良いとしよう。

 12月13日(日) マグロール

 日常の幸せなんて、ごくごく些細なことだと思わないか?
 例えばやたらと美味しいものが食べられたとか。
 こころゆくまで寝ていられたとか。
 そういうわけで、私は今日常のささやかな幸せを満喫しているところなんだ。邪魔しないで貰いたいな。フィンゴン。兄上がいいって言ったんだから。

 12月14日(月) アルゴン

 原点に帰るってやっぱり大事だよねトキメキとかさ、うん未だにときめけるって結構すごいと思うんだよね私もがんばらなきゃなー、……っておじいさまが言ってたんだよ。テレビ見ながら。それは別に良い。けど、テレビに映ってたのってシンゴルでさー。そう、モデルの。うん。
 え?そなの?
 うっわ。知らなかった。そうかだから原点か!

 12月15日(火) アイグノール

 フィンロドにいさまがすっごいモノ見たよ!って駆けこんで来た。どうしたんですか?
 あのね今日電車でね、おっきなぬいぐるみ抱えてカレシの腕に縋ってるカノジョ見たんだ!
 すいません、にいさま。
 俺の想像力が貧困なのはよく分かりましただから実演するのやめて!やめてあげて!トゥアゴンにーに固まってるから!

 12月16日(水) ケレゴルム

 マグロールがルシアンとトークショーやるって言うから、観に行ったんだ。クルフィンと一緒に。そうしたら、抽選会コーナーで、まんまとマグロールが引き当てた。
 クルフィンを。
 舞台から「?」って顔でしげしげとこっち見て、「げ」って顔した、マグロール。司会者に「当たった方、手上げてくださーい」って言われてクルフィン控え目に手を上げた。せめて嬉しそうな顔しとけよ。
 そうしたらマグロールがなんか動揺して。あれ、絶対笑いをこらえてたんだ、そうだ。司会者に突っ込まれた。
「どうしました?」
「いえあの何でもないです」
「あの方が当たられましたね」
「…………」
「え!?弟さんですか!?」
「………ハイ」
「くじ運強い家系なんですか?」
「そんなことはないと思いますが…」
 オチがある。次の籤は俺が当たった。

 12月17日(木) アナイレ

 頭が後からついてくるってこのことよね。
 すっごい舞台だったわ…すっごいって思ってるうちに終わってたわ…。
 帰り道、ふらふら歩きながら、やっと舞台のこと考えられたくらい。
 ひとの身体って、すごいのねえ。

 12月20日(日) クルフィン

 寒い。
 寒すぎる。
 二日間ばかり蒲団にくるまっていたら、さすがに今朝は兄上にたたき起こされた。
 わたしは悪くない。

 12月21日(月) エアルウェン

 風邪、引いちゃったかしら。なんだか今日は無性に暑くて暑くて。化粧するまでもなくほっぺ真っ赤なのじゃないかしら。いいえ。仕事は、気合よ!
 ……でも、ひと段落したら本国にちょっと帰ろうって、思うのよ。先月にごたごたしてから帰っていないし。

 12月22日(火) フィンゴルフィン

 一年で最も夜の長い日、ということは勿論昼は一年で最も短い。つまりは日の出だって遅い。自明の理というやつだ。だが朝、さすがに寒くて頭が回っていなかったらしい。いつもと同じ時間に起きた筈なのにほとんど真っ暗で、まだ夜かと思った。違った。
 柚子湯は必須ですよとマエズロスが言っていたのだが、ああ、それは分かっているのだが!
 大量の柚子を抱えて突撃お宅訪問、なのだろうか。異母兄上の不機嫌そうな顔と言ったらない。もしかしないでもこの後にはいざその柚子を入れた風呂に突撃、……なのか…?
 甘い筈のカボチャがなぜだか塩辛かった。

 12月23日(水) ケレブリンボール

「マエズロス、酸っぱい、これ酸っぱすぎ…」
 フィンゴンおじがなみだ目でポテトサラダたべながらいいました。マエズロスはぜんぜんびくともしませんでした。
「柚子が勿体なかったからかけたんだが。私はこれくらいの方が好きだな」
「ううう…酸っぱすぎだろ…」
「エレイニオンも好きそうだが?」
 ぼくもすきです。いつものポテトサラダとちがってて、おいしい。エレイニオンもまんぞくそうです。
「お前今からこんなん好きで、悪阻の時になったらどんだけ…」
「誰も悪阻なんぞにならないから安心しろ」
 マエズロスはにっこりわらっていうと、おもいっきりフィンゴンおじの口にサラダをつっこみました。ぼくしってます。くちふうじっていうんだよ。

 12月24日(木) フェアノール

 誰が一番料理上手か?カランシアだろう。
 即答したら何故か絶句された。何だ。何がおかしいのだ。

 12月26日(日) フィンウェ

 あー、王でよかった!
 ………ってこと?ないね。ないんだよね。はは。
 いや、気の持ちようひとつだとは思うけれど。君はどうなの?

 12月27日(月) ネアダネル

 フィギュアスケートのエキシビジョン観ていたら、ある人の曲が「ワイルド・チャイルド」で、うっとり観てからマエズロスがこう言ったわ。
「これって、母上から父上へのテーマソングみたいですね」
 ………あら、そう?
「いわゆる英語の有名曲って、奥方から旦那へのテーマソングに聞こえます」
 と、いうことは、私以外の人にもそう思ってるのがあるってことなのかしら。よくよく聞いてみたら面白かったわ。
 義母君が「ミス・ア・シング」。お母さま王妃が「ラヴィン・ユー」。……義父上愛されてるわね。
 アナイレが「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」でエアルウェンが「スタンド・バイ・ミー」。
 じゃああなたは「ユー・レイズ・ミー・アップ」ね、と言ったら、真っ赤になって、それから切ない目で言ったの。
「飢えのない人生などない?」
 そうね。だから満たされるのよ。

 12月30日(水) エレイニオン

 ぼくわ みんな だいすき
 すごくすごくすき です

 12月31日(木) アレゼル

 私のローミオン。愛しいマイグリン。会えて嬉しいわ、これからよろしくね。
 あなたの髪は私ゆずり、瞳はエオルから、深く澄んだ夜の色。
 私からの名前を悪く思わないでね。いつか聞かれそうね。恨まれちゃったりして…うまく言えないけど、私にとって、薄明というのはとても良いイメージなのよ。きっとこれから伝えられるわ。
 私は幸せよ。今は冬で、ちょっと寒いけど、腕の中にはマイグリンがいて、私の傍にはエオルがいるもの。
 今年一年いろいろあったわ。きっと来年もいろいろあるわ。
 でも大事なのはひとつだけね。私たちは、生きてるわ。
 そしてこれからも生き続けるの。

 さあ、新しい年の新しい夜が明けるの。
 晴れの日を、みんなで迎えましょう。