4月1日(水) ケレブリンボール
「ニルヴァーナが私の子を身ごもったそうだ」
マエズロスがでんわをきっていいました。フィンゴンおじが「うそっ!?!」とさけんでこーちょくしました。
「無論、嘘だ」
マエズロスがにっこりわらっていいました。フィンゴンおじはまだかたまったままでした。エレイニオンが、とたとたあしもとによって、「かーさま、くるの?」ときいてもかたまったままでした。マエズロスが「近いうちに寄ると言ってたぞ。さあもう寝る時間だ」とエレイニオンをねかしつけにかかってもまだかたまってました。そのあとはぼくもねたのでしらないけど。
4月2日(木) ケレゴルム
昨日のクルフィンはすごかった…嘘しか言わないって、ちょっと待てお前どんだけ二枚舌…。なんか違うか。二枚舌はマグロールかな。ああ、昨日マグロールに会わなくてよかった。俺の許容量はクルフィンだけで満杯だ。
で、その嘘のせいだと思う。この口内炎。たぶん7つは確実にある。はっきり言って喋るのも辛い。口動かすとあちこち痛い。飲み物も選ばないと染みてしかたない。胃にきたな…ぜーったい昨日の嘘のせいだ。ああもう…家出しようか…。
治し方は最強に効くのがひとつ、ある。
…………………それもいいかもしれない。最悪、本国までたどりつけば相当な感じで効くのも、もひとつ、ある。よし決めた。そうしよう。
あ、兄上、俺ちょっと旅に出るから。
4月3日(金) ガラドリエル
………ヒマで死にそうな一日だったわ。学校が始まるまであと2日。ちょっと旅にでも出ようかしら。
おじいさまに用があるのよ。
4月4日(土) アムラス
マエズロスが壊れた。
て、書いておきたくなるくらい滅多にない、幼モード全開の兄上を目撃してしまった。
今日は忙しかったんだ。明日は大事なお客さまが来るとかで、今日は朝から買いだしと掃除と料理の下ごしらえ。へとへとになった兄上が、茶色い小瓶を開けて、机に置いて、ちょっと作業して、取ろうと手を伸ばした瞬間、ぱたん――
兄上、すごい顔した。で、零れたのを布巾で拭きながら、瓶に残った液体をぐびぐびぐびっと飲みほした。……それからヘッドセットひっつかんで、えらい勢いで、呼び出し。
「緑の。あれ送って今すぐ送って春風便で」
呼びかけなしでいきなりそれ。スカイプの向こうで叔父上がキョドってるのがよくわかる。
「いいだろたまにはお願いしてくれたって!僕もうアレがないとダメだ茶色じゃダメだ間に合わない緑の。緑の送って」
その後もぎゃーぎゃー言ってた。春風便って、あのひとのことかな。来るんならちょっと会いたいな…。
……って、茶色いのと緑の?兄上、それって、ケレゴルムの旅の目的じゃ…!
4月5日(日) アムロド
家に帰ったら、しくしく泣いてるエレイニオンをしっかりだっこして、兄上がゆらゆら揺れてた。あー、今日お客様だったっけ。
ぼくはとりあえず足音しのばせて上に行った。声はかけないにかぎるよね。きっと面倒だから。
4月6日(月) アングロド
誰!? カランシアん家にラスク持って来た超イケメンは!!
あ、もちろん、ぼくは顔見てないから実際イケメンだったかどうかは知らないけどさ、ラスク!グーテ・デ・ロワ!これちょーっ美味しいっよねっ!
って、奥さんとすっごい盛り上がっちゃった。アイグノールとガラドリエルが始業式でさ。ぼくはまだでさ。家にいるのもなんだかなぁと思って、カランシアに最近仕事はどうなのって聞こうと思って(僕も新学期にそなえてレポート数本書いておこうかなとかもあって)来てみたら、カランシア、いないの。で、奥さんいたの。ちょっと緊張したけどもてなされてみたら、茶菓子に、ラスク!ぼくこれ大好物なんだよー。
昨日お客があったとかで、いただきものなんだけどって、もう出所どうでも美味しいものは美味しい!楽しくもてなされたよ。でもカランシア帰って来なくてさ…。なんか途中からドキドキしてきたよ。不倫!? これって不倫ポジション!? って。でも奥さん、ぼく放っておいて庭の畑の手入れ始めるしさ、むしろ…息子扱いなのかな、実は。ここん家はこども出来たら娘だと思うんだけどな…。
4月7日(火) アナイレ
あたくし今日はサラダを作ったんだけど、何かひとあじ足りない気がするのよね。
試そうにも元がひとつしかないし。どうしようかしら。マエズロスのところ行こうかしら。
なによアルゴン。なんでもマエズロスに言えばいいと思ってないかって?当たり前じゃないの。少なくともあたくしの付き合い方はそうなの。黙ってて頂戴。
あらフィンゴンお帰りなさい。なぁにそれ。ニンジン?あら、違うの?……チーズ?マエズロスから?じゃあこれが正解ね。さ、かけて。
4月8日(水) フェアノール
映画を観た。……理由は聞くな。
チュッパチャプスが食べたくなった。……理由は言わずもがなだ。
………どこの店に寄ってもなかった。
それで、私は今スペインにいる。
我ながらたまに嫌になる。
4月9日(木) イドリル
きょうは、とってもあったかかったのね。おへやのらんにもちょうどよかったみたいなの。きょうもきれいにさいてるわ。
おみずをやるのに、きりふきで、しゅっしゅってかけてあげるの。
わたしがおしごとでいないときは、おとうさまがしゅっしゅってやってくれてるのよ。わたし、しってるんだから。おとうさま、けっこうきをつかってせわしてるのよ!けっこうおきにいりなの。
4月11日(土) エアルウェン
ちょっと飲みすぎちゃったわ。昨日。
今日は待ち合わせに遅れそうで、焦って劇場窓口に前売り券を出したの。そうしたら窓口の方も焦ってしまったらしくて。わたくしの手元にはちぎられてない前売り券が残って。
………観終わってから気づいたのよ。これ、誰かにあげちゃダメかしら?
4月12日(日) ネアダネル
ああ、喋った。たまには大いにお喋りが必要なのよね、女って。特に夫のことに関しては。エアルウェンから映画のチケットを貰ったから、義娘と出かけたの。お互い夫には内緒で……少し意地悪だったかしら。
愚痴や瓦斯抜きは必要よ。もちろん、愛してるから。
4月13日(月) フィンゴルフィン
起きぬけに第一のショック。隣にアナイレがいない。もぬけの殻のベッドがあった。焦って階下に降りれば、台所で椅子に腰かけてのんびり紅茶を飲んでいた。ほっとしたが、ほっとしている場合ではない異常事態が起きていた。
………お弁当がある。
「それ、今日のあなたのお昼。持って行って頂戴」
……………幻聴を聞き幻覚を見るほど疲れ果てているのかと自らを疑ったが、現実だった。
本当は今日は弁当が出る打ち合わせのお昼だったのだが、構うものか。
しかし、若干怖くて蓋を開ける手が震えたのは事実である。愛にも恐れはある。いざ!
4月14日(火) アイグノール
同じ歌を違う言葉で歌う、場合、歌詞がまるっきり違う場合があります。友情の歌が愛の歌に変わったり。風景を歌った歌が心情の歌に変わったり。
………歌い手でも違います。今日、俺はそれをとても強く思いました。なんだか寝付けそうにありません。
4月16日(木) ガラドリエル
ともだちとでんわでおしゃべりをしたのだけれど、かのじょ、いまとてもつかれているみたい。かいわがきほんてきにぎおんだったのよ。わたしはへんかんができないげんしょうにみまわれているわ。これってよみにくいわよね…でもちいさなこがしゃべっているのってこんなかんじね。そうかんがえるとすこしたのしいかも?
4月17日(金) フィナルフィン
実は私には、マエズロスの為に作った歌がひとつあって、それは幼なじみは皆知ってる。とはいえ、マエズロス自身は、その曲が自分に向けられてるって気づいてないみたいだけど。
で、それ、ひとりで歌うと死にそうになる。途中にちょっと掛け合いが入るんだ。だから私は大体アナイレと、それからエアルウェンと、時にはマエズロス自身と――歌ってきた。
我ながらね。秀逸な歌詞だと思うよ。ちょっと曲調が走りすぎなんだけど。うっかり気を抜くとどんどん早くなる感じ。リズムが走り始めたらもう止められない。…そこもマエズロスらしいと思ってるんだけど。
あいつ、突発的に旅に出たらしい。ところでそろそろ2週間経つけど、弟君はまだ消息不明なの?まあ、最終的にはオロメさまに聞けばいいのかな、彼は。
4月19日(日) アルゴン
足攣った。蚊に襲われた。最悪な夜だった。んでもってあんなに蒲団の中が暑くて死にそうだったのに、朝起きたら寒くて死にそうだった。
踏んだり蹴ったりって日はあるもんだ。春?オレは蒲団でごろごろするのがイイ。ごろごろしながら本だったら読んでもいい。
4月20日(月) クルフィン
疲労のあまり、握力がぐだぐだになっている状態で電車に乗った。網棚に荷物を乗せた。乗り換え駅で手がすべった。荷物を落とした。座っている人物の膝の上に。
座っていた人物は「ぎゃっ」と叫んだ。良く見たらケレゴルムだった。
わたしは悪いかもしれないが、握力がぐだぐだな奴に荷物を持たせるのはどうかと思う。何度か落とした。中身?知らない。
4月21日(火) アナイレ
マエズロスが家出しちゃったのよ。って言うのもちょっと違うのかしらね…。とにかく旅に出ているの。そういうわけだから、今、こどもたちはあたくしとエアルウェンで面倒をみてるのだけど……笑っちゃうくらいに手間も面倒もかからない子たちだわ。少なくともエレイニオンは、あたくしにも、フィンゴンにも、育てられなくて正解なんじゃないかしら。かわいい孫でおばあちゃん嬉しいったらないわ。
……で、初めてじゃないかしら。ケレブリンボールと喋ってみたわ。
そもそも彼の父親のクルフィンともね、喋ったことがないのよ。ちょっと驚きよね。
なんて言えばいいのかしら。この子ずいぶん…エレイニオンが好き、なのねえ?
あたくし、フィナルフィンにはそんな感情皆無で、マエズロスとはもっと違った感じで…エアルウェンとはもっとおおきくなってから……ああ、それともこれ、なのかしらね。一番ちかいの。これからが、楽しみだわ。
4月22日(水) アングロド
おみくじって、その概念はどうかなって思うんだけど。カランシア?聞いてる?
ピンクの紙持ってカランシアがうろうろしてたから(ウチの前で)、声をかけたら「ニエルのおみくじ」って一言いって、それっきり、だんまり。奥さんがどうしたの?
手元のピンクの紙には「海月館に行くと吉」だって。ぼくとしては、凶か何か引いたわけでもないのにおみくじに従うのってどうかなーと。と言うよりもそもそもおみくじって概念がぼくら的にどうかなって。まあでも、カランシアの奥さんの突発的行動っていつものことだし。カランシアがそれに振り回されてるのもいつものことだし。これでいいのか。
とりあえず、お茶を出してもてなしてあげようっと。茫然自失としてるから可哀想だもんね。
4月23日(木) フィンロド
おなか痛くて、死ぬかと思った。
トゥアゴンが何か得体の知れない緑の瓶に入った液体をくれた。飲んだ。
痛くなくなった。
痛くないって、素敵だ。
4月24日(金) フィンウェ
別にどうってことないんだけどさ。
ちょっとミーリエルの昔のケータイが出てきたからさ、うっかり……とか言っちゃだめだよね。はい。確信的にメール覗いちゃったんだ。好奇心に負けたっていうか、いや多分あのひとは分かってくれるだろうけど、私は、こういう奴なんだ。で、覗いて、覗くんじゃなかったって今ものすごく後悔してるとこ。
ねえ、聞いてる?後悔してるけど反省もしてるんだ。慰めて?
………だって、ちょーイケメンのカレシなんだもん。メールが。まるっきり。ミーリエルの送信メールがね。うん。
相手?
別にね、どうってことないんだけどさ。
どうってことないんだけどさ。
インディスだよ。
だから反省も後悔もしまくりだってば。
どうってことないけどね。
4月25日(土) ケレブリンボール
こんしゅうはマエズロスがたびにでているので、ぼくたちは、アナイレ大おばとエアルウェン大おばのところにおせわになっています。エレイニオンにとってはおばあさまのところです。フィンゴンおじはぜんぜんかおをみせません。アナイレ大おばが「困ったさんよね、あの子。わが子ながらビックリだわ」といってました。アナイレ大おばはおもしろいひとです。とってもぶきようです。マエズロスがすきなわけがよくわかります。フィンゴンおじともにてます。エレイニオンともにてる、かな?
4月26日(日) オロドレス
春のせいかな。すこし、明るく鬱々とした気分だった。そうしたら、兄さんが陽気にだらだらしていてね。隣に寝転んでわたしも今日はだらだらしていた。……といっても結構動いた気がするけど。家事って考えるよりも重労働でしょう。
そういえば、長らく海を見ていないな。今度フィンドゥイラス連れて行こうかな。
4月27日(月) フィンゴン
昨日からなんかくしゃみが凄くて止まらないなって思ってたら、今日になったら体の節々がリアルに痛い。ってことはこれって、……風邪か?
マエズロスがいないのに風邪になってもなー。
仕方がない。寝よう。
4月28日(火) トゥアゴン
兄上、よもや豚インフルではないだろうな…。
この高熱を見ていると不安になるのは私だけではないと思う。だからといって、父上以下家族全員私に看病押しつけてきたのはびっくりした。父上は仕事にかこつけていたが、母上たちは完全に押しつけだ。
それもこれも全部マエズロスがいないせいだ。
肝心な時にいないんだ、あのひとは。
4月29日(水) カランシア
で、どうして僕がおまえの看病?
家族に見捨てられてるんだな。そうかわかった。ご愁傷さま。それじゃあこれで―――おまえ、幾つの子供なんだよ。淋しいとか言うな聞き飽きた。
は?僕もやるだろうって?兄上限定の話だろ。おまえは兄弟じゃない。
………泣くな!
4月30日(木) アレゼル
風邪はどうなの、フィンゴン兄さま?
聞くんじゃなかったわ。「悪い」って、その声がすでにすごいことになってたもの。全部に濁点ついてるみたいなすごい「悪い」よ。
悪いけど、私には絶対にうつさないでね。いいわ、私から出て行くわ。大変なのよ。今風邪なんかひいたら。薬だって難しいんだから。ヘンな子生まれちゃったらどうしてくれるのよ。