こいよあなたにもえうつれ

 (焦らなくては)

 焼けた街でも火は焚かれる。
 滅ぼす火ではなく新たに生み出す火を。

 (焦らなくては)

 森の宴で焚く篝火と、この火はよく似ている。
 そして違う。
 この火はアタニの火、太陽の火、目覚めの火、前へ進む力の火。

     ああ、それによく似た炎が今はこの胸に吹き上げている。

 あぶない、と深い少しきびしい声が飛んできて、身体が引き戻される。
 目の前でぱちぱちと踊る炎が、くすくすと笑う。

 「燃え移ったら、どうなさるのです」

 エルフとて火に巻かれれば危ないのでしょう。
 そう云う彼に見せてやりたい、わたしの心はとうに火に包まれた、
 この火は消せない、この火は消せない、
 火を吹き上げるのはわたしの心自身なのだから――

 (焦らなくては)

 「…いっそ燃え移ってしまえばよい」

 戸惑うように腕が震える。彼の鼓動が聞こえる。
 わたしと同じように速まっている。錯覚だと思いながらもそう期待する。

 (焦らなくては)

 彼の黒い瞳を覗き込みわたしは、じきに、恋を囁くだろう。

 焦らなくては。焦らなくては。
 彼はあまりに早くいってしまうのだから。

モノカキさんに20の台詞 お題17「燃え移ったらどーすんだテメェ!!」