うた

 マグロールの歌は比類なく素晴らしいのだが、こういう席には重々しすぎる。
 だからそういう祝いの席では、マグロールは歌わない。歌うのはケレゴルムだ。
 マグロールは曲を奏で、双子が踊りながら曲を彩る。そこにケレゴルムの歌が乗る。
 手の技に長けた黒髪の弟ふたりの頭をぐりぐりと撫でて、マエズロスは肩をすくめる。
「さ、踊りに行くか。上らされる前にな」
 折りしも卓の上で踊り歌っていたケレゴルムが、弟ふたりを見てにやりと笑った。