「私って、こんな顔してるんだ…」
彫りあがったばかりの胸像をしげしげと眺めて、フィンウェはどこか幼い声で呟いた。
「出来はわたしには判断できないのですけれど」
微笑んでネアダネルが言うと、彫像よりもきらめく髪がさらりと揺れた。
「どうして?」
「義父上に関するものの評価は、フェアノールが決めますもの」
石を担いで戻って来ると、工房の前には誰かがいた。――誰か?思った瞬間にネアダネルはぎょっとして立ちすくんだ。
「……義父上?」
扉にもたれかかって目を閉じていた人物はふっと瞳を開いた。灰色の眸はぼんやりとした光を映し、その後ぱっと輝いた。
「ネアダネル。…おかえり?」
「待っていらっしゃったのですか?」
足を速めて近づくと、フィンウェは、んー、と首をかしげた。
「休暇だからね」
それから彼はネアダネルの背負っていた石に興味を引かれたようだった。
――何をするの?見てても良い?
だからネアダネルは、以前から一度してみたかったことをすることにした。
――義父上、像を彫っても良いでしょうか?
――私の?良いの?初めて言われた、そんなこと!
「駄作ならあることにも気づかないでしょう。失敗作なら壊してしまうでしょう。成功なら…あら、どうするかしら?」
とうとうと語ってみせたネアダネルに、フィンウェは目を丸くして聞いた。
「……あなたの作品でもそうするの?」
彫像を庇うように抱きかかえながらの言葉に、ネアダネルは声をあげて笑った。