金の声 銀の光

 確か、成人する少し前の時、歌比べに出ることにしたと言ったら、従弟どのは、じゃあ髪飾りは決定だ、と云って笑った。
 父上の?問い返したら、伯父上のが素晴らしいのは勿論だけど、もっと良いのがあると云う。首をかしげる私を連れて、従弟どのはそこへ行った――エゼルロハール。
 アリエン、と従弟どのが呼ばわると、雪のましろの銀髪をしたマイアが空から舞い降りる。手にはいっぱい銀の花を抱えて。

 従弟どのは編んだ蔓に一心に銀の花を挿していく。あいにくと、垂れ下がる形の花だ、花冠に向いているとは言い難い。
 案の定できあがった花冠は奇妙きわまりなく、被ってみるとヴェールの不恰好なもののようだった。
 従弟どのが拗ねた。大きすぎたかな。アリエンが生真面目にお揃いですねと言った。
 アリエンのヴェールはもっと繊細で、七色で、洗練されたものだったが、確かに目を隠すには同じだ。花の内から透かし見る世界は、おかしなことに普段よりも甘く冴え冴えと美しい。
 冠じゃない方が良さそうだと従弟どのが口をとがらせ、私は突き上げてきた笑いに身を任す。笑う。笑う。笑ってすごす。

 持ち帰った花冠は部屋の中で光となって溶けた。兄は微笑んで光の雫を杯で受け止め、私にこくこくと飲ませてくれた。多分、幸せだった。

 歌の最中に、たったひとつ、ひっそりと留めた銀の花は光となって滴った。髪をしとどに濡らしたそれはやはりきらきらと光っていたようだった。
 興奮に酔いしれて群集の中へ戻れば、従弟どのは光に濡れた私の髪を、口に含んで吸った。祝祭だ。