タタ

 闇と星の光、その下で黒く深くきらめく髪を持つクウェンディ、タティアールの長、タタはその報せをひとりで受け止めた。
 常に無関心を装う、銀髪の小柄な彼は、腕の中でやはり彼ひとりの悲しみの中にいる。
 それにタタは入ることができない。
 氏族の性情の違いでもある。個人の感覚の違いでもある。
 悲しくないわけではない。
 ただ、タタは悲しみよりも大きな、胸の底から吹き上がる思いにとらわれていたのだ。

 (戦わねばならない)

 その行為はすでに名づけていた。戦いと。
 我々の暮らしの深くにすでに根付いた、闇と合わさる恐怖へ立ち向かうこと。
 それは狩りでもある。
 なぜなら勝たねばならないからだ。
 それが成すべきことだからだ。
 こちらが優位でなくてはならないものだからだ。

「タタ」

 やがて悲しみを収めて、腕の中からエネルが問う。

「タタ。……獣は、また、来るのだろう。ではわたしは何をすればいい」

 タタは答える。
 (戦わねばならない)
 あなたひとりで成すことはありません、と。

「ただ、私たちは希望をすでに送り出しました。ですから答えはひとつしかないのです。獣を、狩らねばなりません。私とあなたで」
「彼方と」

 エネルは目を見開いてタタを見る。
 その瞳の奥の運命を覗き込む。

「イミンの分も、わたしたちが、…成すのだな」
「そうです。はじめての戦いは、私たちふたりで」

 タタは告げる。タタの胸の火はエネルにも分かる。
 そしてふたりは支度にかかる。
 戦わねばならない。

 闇に立ち向かい生き続けるために。